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外部環境分析「事業経済性」その3「経験曲線」
2021年4月18日| Webマーケティング, You Tube, マーケティング戦略策定基本プロセス■外部環境分析(4)「事業経済性」その3「経験曲線」
3)経験曲線(習熟の経済)
経験曲線とは、累積生産量が増加することによって・固定費・変動費ともに低減する現象をいいます。
・経験効果により、生産スピードが上がる
・経験効果により、歩留まり(材料に対する収率)が改善する
経験曲線(エクスペリエンス・カーブ)とは、コンサルティング会社のボストン コンサルティンググループ(BCG)
創業者が、経験曲線効果を理論にまで昇華させました。
コスト低減のメカニズム。累積生産量が増すほど単位当たりのコストが減少することである。特に製造業において
顕著に見られる現象。累積の生産量が増えるに従って、過去の経験や溜まった知見を反映して
生産プロセスの効率化が進み、歩留まりや生産性が高くなることが要因。通常、累積生産量の多い会社は
上位企業であり、新技術の採用に
積極的であることも生産性を高める要因。
経験曲線の傾きは、業界ごとに異なる。
ナレッジの蓄積や学習に熱心な会社は経験曲線の勾配が急になるが、そうでない会社では勾配は緩やかになる。
経験曲線においては、2つの注意が必要です。
1)経験曲線は改善や改良の積み重ねの結果であるため、劇的な
イノベーションが起きて一気に「ゲームのルールが変わってしまう」場合
電気自動車が普及し、製品の構造がモジュール型(パソコンのように機能と
パーツが1対1で対応しており、組み立てが単純な製品構造)に変わってしまう
と、それまでの日本企業の強みが生きず、コスト競争力が失われてしまいます。
2)習熟によるコスト低減はいつかは終わる
同じペースでコスト低減が続くわけではなく、どこかの段階で曲線がフラット
になる時点が来ます。
コモディティ化が劇的に進んだ製品では、誰が作ってもコストが同じという状態になります。
どの段階で経験曲線が効きにくくなるかを予測することも、戦略を構想する上で重要となります。
Cn=C1X-a
Cn:n番目の商品の製造コスト
C1: 1番目の商品の製造コスト
X:累計の生産回数
a:累積生産量のコスト弾力性(累積生産量の変化率/コストの変化率)
※グラフは習熟率70%、aの値を0.5146として計算。
●経営戦略の観点での考察
たとえば、長くB社が支配していたマーケットにA社が参入したときの状態を考えてみましょう。単位あたりコストは、
後発のA社のほうが圧倒的に高いので、B社はコストリーダーシップ戦略を採用することで、
A社に対抗することが可能となります。例えば、同じ価格ならば利益を多く得られるのでその経営資源を
広告費等に投下することで知名度を高めることが可能となります。
また、コストが低いので低価格で販売しても利益はでます。
しかしA社は同じ価格で販売するとなると利益をかなり削らなければなりません。
場合によっては逆ざやになってしまう可能性もあります。
そうなったらA社はこの事業から撤退するかもしれません。
B社にはA社参入直後であれば様々な戦略オプションが考えられます。
しかし、B社がそういった揺さぶりをかけなかったとします。
A社参入から時間が経った状態では、A社とB社の単位あたりコストは肉薄してくるため、
コストリーダーシップ戦略が効きにくくなっています。
この状態ですと先ほどの戦略オプションの効果は限定的となり、
B社の揺さぶりはさほどのインパクトを与えなくなるのです。
このように、経験曲線(エクスペリエンス・カーブ)は未来を見据えながら、
導入期、成長期、成熟期、衰退期における業界特性の分析に用いることができます。
また、事業への参入の意思決定や価格設定等活用可能です。
外部環境分析 4事業経済性その2「規模の経済」
2021年4月11日| Webマーケティング, You Tube, マーケティング戦略策定基本プロセス■外部環境分析(4)「事業経済性」その2「規模の経済」
2)規模の経済(スケールメリット)
規模の経済性とは、事業規模が大きくなればなるほど、単位当たりのコストが小さくなり、
競争上有利になるという効果。コストリーダーシップ戦略をとるリーダー企業にとっては特に重要なコスト低減の方法です。
規模の経済性は、狭義には、固定費が分散されて、単位当たりのコストが下がるという
メカニズムを指す。バリューチェーン上で言えば、研究開発費や広告費に規模の経済性が働きやすい。
たとえば、「スーパードライ」発売以前のアサヒビールは、キリンビールの6分の1程度の売上げしかなかったにも
かかわらず、キリンの70%程度の広告費を必要としたといいます。
研究開発費がコスト上重要な位置を占める製薬業界では(2019年度の研究開発費は、
業界トップ企業は2000億円から3600億円を投じているようです)、国境を越えたM&Aによって、
この規模の経済性を実現しようとしています。
規模の経済性は、より広義には、固定費の分散のみならず、バイイングパワーの強化による仕入れコストの低減も含みます。日本で家電販売首位の座を占めるヤマダ電機などは、この大量仕入れによる売上原価低減を大きな武器として
急成長しました。
というのが通常「規模の経済」の説明になりますが、「ネットショップ「勝利の法則」 ランチェスター戦略」では、
企業のバリューチェーンにおいて、それぞれのセクションで規模の経済を効かせることで「差別化」を実現している
事例を説明しています。
先ほど「スーパードライ」で説明した研究開発費や広告費は売上が上がるほど、1製品当たりのコストが
安くなることはわかりやすいと思います。
それ以外では原料調達や製品仕入で輸入をする場合、同一コンテナでは極端な話、1個を輸送しても満載でも
輸送コストは変わりませんので、輸送量が増えた方が規模の経済は効きやすいと言えます。
サポートにおいても、規模の経済によりサポート体制・チーム自体は固定費となりますので、
1製品あたりのコストが安くなることになります。
ただし、「事業経済性」その1で説明した、稼働率をどう上げていくか?
KPIの設定と品質向上のトレードオフの解消が重要な課題となります。
ただし、コストリーダーシップ戦略は、基本強者の戦略になりますので、
弱者は特定の分野における狭いターゲットを対象に、特定領域を規定し、
そこで規模の経済を実現していきコスト優位性を確立していくことが重要です。
間違っても、強者がコストリーダーシップ戦略で低価格を仕掛けてきたとしても、
それに安易に追随するのは利益率の低下を招くだけになってしまいますので注意が必要です。
また、ネットショップにおける労働集約的な業務、たとえば配送業務や商品撮影等は、
機械化等の効率化が難しく、人件費率が高いため、規模の経済は効きにくいとされています。
ここにシステムを導入したり、アウトソーシングを導入することで稼働率の経済から
規模の経済にシフトすることが可能となります。